幻が視る固定未来
その後はやはりいつもの休日になる。別に今日が特別だったというわけではないが、それでもバッティングセンターに行ったなんてある意味特別かもしれない。
そうしてオレと有希乃はショッピングモールで色々と買い物をしたり、休憩のためにカフェに入ったりと色々と楽しんだ。

楽しいことをしていれば時間が過ぎるのが早い。そう言った人がいた。昔のオレなら全く信用などしていないだろう。
けど今のオレは信用出来る以前に、それを体験している。

今はもう夕方になり帰っている途中。電車の移動もして歩いて帰るだけの道のり。そこでやっとオレは休日が終わったんだ、と実感していた。
こんな休日なら毎日でも送りたい。けどそれはただのわがままであり、オレには叶わないこと。
オレに人と同じような時間を生きられるのはこの休日のみ。他の時間は全て“真の玄武”を目指さないといけない。この楽しい時間よりも最優先として。

そう、オレは頭ではちゃんと理解していた。何が大切で何をしないといけないか。そしてオレの未来は絶対に変わらないということを。
けど一時の感情はそうではないらしい。だから今のオレは優先しなければならない時間よりも、今、有希乃といる時間を過ごしたいと――楽しみたいと思ってしまう。
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