幻が視る固定未来
召使い以上、友達以上、恋人未満?
いつもと変わらない訓練。有希乃がいない訓練はすでにこの“幻視”の訓練の他ない。

進歩などない。

オレは常に欠陥品を生み出すのみ。ただの真似ごと。考えれば今やって
るのは幻視ではなく、ただの幻。
下手をすればただの手品レベルにまで落ちている。

――それでも形はやはり本物。だけどただの幻。ふとしたことで消え去る虚しい形。
オレは偽物を作る。本当はそんな力ではなかったはず。
偽物が本物に劣るとは限らない、そんな言葉をどこかで聞いたが、残念なことにオレの幻視では偽“物”ですらない。

これは一体いつになったら成長を遂げ、進化の域に達するのだろうか。
この幻視をまともに使えないと真の玄武にはなれない。そんなことはもう理解している。だけどどうすればまともに幻視を扱うことだできるかは理解していない。

この前は助歌にはっきりと言われた。オレの幻視が扱えない訳。それをオレは認めない。
だって助歌はオレではなく有希乃のせいにしたのだから。そんなこと絶対に認めない。

それともう一つ、もっとここに来るのを楽しみにしてほしいと言われた。どうゆう風に考えればオレの成果がでない理由を有希乃のせいにする、この場所に来ることを楽しみに出来るのだろうか。

はっきり言って無理だ。

それこそ今、オレがこの場にいるのは“意地”だ。次こそはやってやるという意地。けどそれほど熱いものはない。この状況を焦り、次ではなく今の段階で出来ていないとダメだというのに。

そうして今日も時間を無駄にする。
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