幻が視る固定未来
「この前、なんで遅く帰ってきたのに文句言わなかったんだ? いつもなら絶対に言うと思ってたのに」
「言った所で無駄でしょう。私では叶わないような言い訳も持っていたでしょうし、時間の無駄です。それに今はまだ“観察段階”ですから」
「観察段階? なんだそれ」

オレは問いただすように聞く。いや問いただす。何か分からないが助歌のその言葉には寒気を感じさせられる。この先に絶対に良くない展開になるとオレの勘は言っている。
けど、助歌は表情も変えないで言う。

「観察段階では何も言えません。これは奥様との約束です。どうか次からはそんな愚かな質問はしなで下さい。むしろ、このことに関わりたくないなら“いつもの幻視様”に戻れば良いだけのこと」

――どことなく、その言葉で理解する。何故この前、遅れて帰ってきたのに文句を言われなかったのかを。オレの生活態度を見ている。悪くなるようなら何かしらの罰でも与えるのだろう。
だから、今の段階ではオレに何も期待しないのだろう。そうゆうことなら好きにすればいい。オレも好きにやる。

そうしてオレは助歌の言葉を理解し後の言葉もなく今日の訓練は終了した。
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