幻が視る固定未来
別段、恋人同士だからといって変わったことなどない。むしろ互いに初めて故に恋人同士の付き合い方を知らない。
自分から誘ったことから焦っていたオレだが、有希乃が『無理に変わる必要はないと思う。こうゆうのは自覚の問題』と綺麗にまとめた。
そうだな。確かに無理に変わる必要はない。今までだってそうだったんだから。



――有希乃と恋人になった。形だけでもちゃんと自覚している。
心境は複雑だった。嬉しい半分に恥ずかしいが四割、残り一割が……自分の存在。けど今は暗くなりたくない。だから自分の存在について、今は忘れよう。
だって、そうすればこんなにも“幸せ”な気持ちになれるから。

この幸せも初めての感覚。また有希乃からもらった初めての感覚。

正直嬉しい。
本当に嬉しい。
きっと今、鏡を見ればどんな顔をしているのか。見なくても想像できるくらい幸せそうな馬鹿面ではないだろうか。

それでいいと思う。
今まで知らなかったんだし、この感覚を味わいたい……いつ無くなるか分からないのだから。

駄目駄目だ! 暗いことは考えない。考えたくない。

頭を左右に振ってマイナスの思考だけ取り除く。そうすればまた楽しくなってくるから。
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