幻が視る固定未来
「有希乃、明日はどこに行く? ちょっと遠出でもしてみるか」

土曜日の夜。オレは有希乃と休日をどうやって過ごすかで頭がいっぱいだった。
普段の勉強が遅れていること、普通の訓練ですら遅れていることに構わず、オレは明日有希乃と遊ぶことしか考えていない。
けど別に学校の成績を落とした訳でもないし、学年では断トツのトップにいる。この遅れを知るのは家の者だけ。

その中でも助歌と有希乃のみだろう。助歌が母上に言っていれば母上も知っている。けどそれ普通のは訓練だけ。勉強については有希乃しか知らない。
幻視の訓練にいたってはもうやっていないも同然だった。けどオレはそれを駄目なことと感じ切れていなかった。
何故ならその分、有希乃と一緒にいれたから。

「灼蜘、勉強に遅れを取り戻さないといけない。だから明日は勉強する」

召使いとしては当たり前のこと。そうでないと立場がないだろう。
けど、それだと面白くないと思わないか? せっかくの休みを恋人と過ごせない。目の前にいるのにどこにも行けない。

「そんなのは退屈だろ? 誰も勉強が遅れてることなんか知らないし、別にいいんじゃないか。その内ちゃんと遅れを取り戻す」
「やることはやらないと駄目。遅れているなら出来る内にするべき」

困ることもなく無表情で言っている。

「そんなにオレに勉強をさせたいのか。せっかくの休みなのに有希乃はオレと一緒に遊びたくないのか」
「遊びたいけど、それはちゃんとやることをやらないと私という存在が灼蜘の邪魔をしていることになる。それに勉強している間だって私はいる。勉強だって楽しい」

うまいことを言うな。それだと断れない。
それに今の有希乃の言葉で、確かに勉強も面白いかもしれない有希乃と一緒なら、と思ってしまった。
そうして明日のオレは有希乃と勉強することとした。
< 125 / 383 >

この作品をシェア

pagetop