幻が視る固定未来
「そう」

……けど、やっぱり現実は甘くない。
オレの会心の話題を有希乃は一蹴する。それも爽快なまでに。

「少しは妬いてくれたりしないのか」
「そうゆう気持ちがよく分からないから」

ちょっと残念だ。有希乃は本当にそうゆう気持ちではないらしい。無表情だから分からないけど、なんとなく雰囲気で分かる。
はぁ、有希乃はオレと恋人だという自覚はあるんだろうか。きっとないだろうな。

「そっか」

オレは残念そうに溜息するしかなかった。

「私といる方が楽しい?」
「え?」

不意な言葉にオレは対応できなかった。会話として脈絡がなかったから。
だからこそ一言の後、オレは冷静に考えられる。
もし、ここで有希乃よりも楽しいと言ったら、今度こそ妬いてくれるのか。愛想でも尽かされるのか。まぁ後者はないだろうけど。
興味本位でオレは全く思ってもいないことを言うことにした。

「まぁそれなりに」

完全に有希乃よりも楽しいとは言えなかった。度胸がないなオレも。
有希乃はそんなオレの言葉に対して無言だった。妬いてるようには残念なことに見えない。言葉にしてないから分からないことだけど。

「ど、どう思う?」
「別に」

やっぱりか。やっぱりなんだな。
これでこんな一言で返されるとオレとしてもかなり悲しい。涙出てきそうだ。
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