幻が視る固定未来
……けど、こんな感想は今の内。冷静になってしまうとオレは、とんでもないことをしていたことを思い知る。

「わ、わ、悪い有希乃」

オレはやっと有希乃を離した。

「ちょっと苦しかった」

感想はオレとは違うらしい。真っ赤なオレに対して有希乃は普段と変わらない……こともない!?
なんかオレと目線を合わそうとしない。それだけも変化なのだろう。それだけでも恥ずかしいという態度なのだろう。

あぁオレはそれを嬉しく思う。

以前、有希乃と恋人同士になってから、オレは芳原に恋人同士ですることを聞いたことがあった。その答えがオレの頭に過る。

『そうなったらキスでもすればいいんじゃないかな』

心臓が早い。これはヤバい。
勝手に芳原の言葉が頭に過った瞬間、オレは有希乃の目線が合わないことよりも視線は下がり……。

「いや、いやいやいや」

オレは頭を振り、なんとか冷静になろうと努力する。

「どうしたの?」

覗き込んでくる有希乃の顔。

それはヤバいだろ?
こんな状況でそんな覗きこまれたら……。
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