幻が視る固定未来
そうなんだよ、オレ一人ならよかったんだよ。でもここにはオレを納得させるよりも効率のいい、有希乃を解雇させる方法が存在してしまっている。
有希乃が首を縦に振ればそれで決まる。オレの意思に関係なく。だって解雇されるは有希乃なんだから。
だからオレはせめて、オレと有希乃が恋人であるのだから否定してくれることを“信じる”しかない。

オレですら反対出来た。だったら有希乃なら? 命令には忠実の有希乃ならどう答える?

オレは恐る恐る、ゆっくりと有希乃を見る。
そこには無表情ながらも何かを決心したようなそんな雰囲気の少女が一人立っていた。

オレはその少女の手を取り、逃げた。逃げるしる道しかない。

……だって、このまま黙っていたら有希乃は首を縦に振っていただろうから。

「幻視様!?」
「灼蜘、待ちなさい」

声を無視した。聞こえないふりをした。
けどはっきりと母上が最後に『一週間です』とまた新たに死の宣告を言い渡していた。

くそっ! 今のオレには逃げるしか道がない。
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