幻が視る固定未来
とりあえず何をしないといけないか。

まずは有希乃が解雇される理由。それははっきりとオレに原因がある。

生活リズムの乱れ。即ち、普通のことが出来ていないということ。だからとりあえず普段やっていたことはすることにした。
有希乃と一緒にいれる時間は多い。だけど話せるのは休みの時のみ。最近のオレはそのことすら出来ず、ただ有希乃と話したい一心だった。

だからとりあえず、やることはやらないといけない。いや、言ってしまえば勉強なんてやらなくてもある程度は出来る。だからこそオレはサボったんだ。いつでも取り返せるから。
なら、一番元に戻さないといけないのは訓練時。特に幻視の訓練時だろうな。気がつけば進化の逆である退化していたんだから。

こんなに本気になったのはどれくらい久し振りだろうか。
失敗すれば今度は成功させるという意地、何度でも挑戦してやる気合が入っている。
多分、この幻視が成功すれば、有希乃おかげで幻視が成功すれば、きっと解雇は消える。だからこそオレは絶対に成功させる!

――しかし、いくら気合いがあっても、やる気があってもそう簡単にできるものではない。そんなこと分かっている。
オレは偽物を作ることに慣れすぎた。だから壊そう。オレの中に潜む如何物をぶっ壊す。

それは本当にゼロからのスタート。だから幻を発生させることから始める。
扉とは反対の壁、その壁の前には花瓶と黄色い花がある。それをオレは幻視する。それが今日の訓練。

背後にいる助歌は扉付近でオレのことを見ているだろう。後ろだとどうゆう顔で見られているのか分からない。けど、少なくとも観察段階とは違った表情だった。
――だからオレは何度も、何度も幻視を繰り返す。
まずは幻を生み出す。右手から左手から、神素を解き放ち形を作ろうと操る。けど幻は形にもならず煙のように舞いあがる。
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