幻が視る固定未来
「確かに灼蜘は玄武として能力を使いこなせてない。神素の量が低いのも欠点だし、神素の解放すらままならない。それなら“私の方”がうまく使える」
有希乃、ここでそんな分析なんていらないんだ……?
……何?
なんだと!?
おかしくないか?
助歌はそこまで言っていない。オレが玄武であるなんて言っていないぞ。
いやいやもっと重要なことを更に言った。
オレの瞳は開かれ有希乃を見直す。だけど目線は合わなかった。何故なら有希乃は助歌を見ているのだから。
「木下、お前は最初から知っていたというのか。幻視様のことを」
それはオレも同じ疑問だ。知っているようにも聞こえるけど、それも的を得ていない。
「知っていたといえば知っていた。それこそ貴女よりも知っている。だって私も灼蜘と同じでエデンの出身者、貴方風に言うならば普通の人ではない」
「な、何を言っている。そんなこと聞かされていない。そんな訳がない」
「知らないということは無知。私の父と母はエデンでは守護四神である白虎と玄武の補佐、隊長の位置に属していた。故に私の髪と瞳は人とはかけ離れた色をもつ」
言い切った有希乃は振り返りオレを見る。
「今まで言う機会を与えられてなくて言えなかった。ごめんなさい。でもこうして向こうから言うチャンスをくれたことは嬉しい」
有希乃は知識だけで言っているのではない。まぎれもなく本当のことを言っている。そうでないと隊長というキーワードと何よりもエデンという神の住む場所を言えるわけがない。
しかもエデンのことを覚えているのはごく数名。死神との戦いで生き残った守護四神とその妻や夫、そして補佐として一緒に戦った隊長くらい。だからこそ、その隊長の子である有希乃は知っていてもおかしくないんだ。