幻が視る固定未来
「終わった」

反省っぽいことをしている内に有希乃の治療は終了。
もう腕は逆方向に曲がらない。むしろ自分の意思で動かせるから完治したのだろう。十分も経っただろうか……。
とりあえず骨折ですら十分すこらで完治とは便利な能力だ。オレも使いたいものだな。

「サンキュー、それでさっきの――」
「――もっと維持できたら完璧。維持できる?」
「やってみる」

そうしてさっきの感覚を思い出して解放しようとして異変に気が付く。
あれ? さっきオレはどうやって解放したっけ?
確か魂から叫んだんだ。有希乃を傷つけないと。なら、それに思い出すだけ。
さっきと同じ感覚。やっぱり間違ってない。これが神素の解放。

「どうだ?」

オレは神素を解放したまま有希乃に聞く。

「大丈夫。それでいい」
「よ、よかった」

気が抜けた風船のようにしぼむオレ。
五日間やってやっと神素の解放か。これからやっと幻視の訓練に入れる訳だが……。

「もう限界?」
「あぁ、もう限界だな。また“明日”やろう」

有希乃は首を縦に振ったかどうか微妙な動きだけで反応した。
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