幻が視る固定未来
「あまり長くは持たないからはっきり見ててほいい」

有希乃は両手でオレの頬を押さえ近づける。

え、あ、なんだ。一体なんだ。

軽いパニック状態でオレは全く状況を把握でいない。だって黙っていると有希乃の顔が近付いてくる。
心拍数が急激に上がり始めた時、有希乃の手が止まり、注目してしまった薄桜の唇が

「見てて」と動く。

いやしかし、何を見れと? そんな疑問は一瞬で消え去り、オレは有希乃の眼を見ていた。まるで殺気でも当てられたかのような感覚に見舞われたからだ。

そうして見た有希乃の瞳。いつもは大人しい水色が、今は太陽の光を反射するかのような水面の眼を持っている。ようは有希乃の瞳が光を帯びているということ。

なんだ、これ。初めて見た。

注目している内に有希乃は光は弱り、いつもの水色へと戻っていく。
そして両手を離した。

「これが神素の質が高いものに出来る神素の解放。そうすると瞳に光が帯び、輝きの度合によって質の高いものだと判断される」
「けど、それって守護四神しか持ってないみたいな言い方じゃなかったか」
「守護四神であるのだから神素の質が高いのは当たり前。後は生まれ持った才能としか言いようがない。私の場合、受け継いだ両親が両方とも質が高いため、私だけがこの解放の域にまで達した」
「なるほど」

簡単に一言で納得したが、それってかなりすごいことなんだろう。一瞬とはいえ、その一瞬ならば有希乃は守護四神クラスの強さを持つということだから。

「けど、この解放段階に移行しなくても幻視の訓練は十分出来る」
「そっか、ならいいんだけど。オレにもその守護四神の解放が出来るんだよな?」
「灼蜘が本当に玄武なら、間違いなく出来る」

オレが玄武であれば、か。そいつは難題だ。
明日のオレは果たして、玄武としての道を選ぶことが出来るだろうか。否定したら今の解放は出来ないかもしれない。
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