幻が視る固定未来
判決……来たる
廊下を歩くオレと有希乃。

いうまでもない、今日は期限の日。だからオレは母上に呼び出されて部屋に向かっている。
不安なんてない。だって有希乃が必要な理由は多すぎる。不必要なはずがないのだから。

部屋の扉の前に立っても、オレは深呼吸もすることなく軽くノックして入っていく。後ろからは有希乃も付いてくる。

「母上、言われた通り来ました」
「はい、待っていました」

部屋の中には落ち着きを持った母上と助歌がいる。
オレは母上の座るイスまで近寄ると話を切り出した。

「なんでここに呼ばれたのかは分かってます。それにその答えも知っています」

母上は少し驚いたような表情をしたのは気のせいか?

「そうですか、木下から聞いたのですね。その割にはひどく落ち着いているようですね」

……ちょっとした違和感。何かずれているような会話。
いや気にしすぎなのかもしれない。それにはっきりと聞けばわかる話なんだしな。

「オレには有希乃が必要だ。それは助歌を通さなくても母上なら分かっているはず。だから幻視の特訓も有希乃に任せた。違いますか」

オレの確信を得た答えを言って、それは間違っているはずがない。
だというのに、この部屋の中ではオレだけが間違った存在であるかのように静寂が起きる。
母上は一度頷き、やっぱりそうだ、と言っているかのような表情でオレと有希乃を見た。
そして助歌は態度ではなくはっきりとした言葉でオレに言い切った。オレの答えとは全く反対の答えを……。
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