幻が視る固定未来
オレは微かな希望を持って聞く。

「有希乃、は?」
「つい一時間前にここを去りました」
「……」

言葉も出ない。あいつはオレに何も言わずに出ていくっていうのか?
まだ、間に合わないか?

「追うことは出来ません。まずは奥さまのお話を聞いてください。だから幻視様、こちらへ」

見透かされた心。だけどそんなの当たり前か。顔に出てるんだろうし。それに元々どこに追えばいいのかすら分からない。オレは有希乃がどこに行ったのか分からないのだから。
仕方がないからオレは助歌についていき、母上の部屋に向かった。
< 171 / 383 >

この作品をシェア

pagetop