幻が視る固定未来
母上はオレが最後に見たまま椅子に腰かけて待っていた。
その表情はなんとも言い難いが後悔はしていないように見える。
「母上」
オレは部屋に入って第一歩で呼んだ。その横をスッと助歌が過ぎて、母上の隣に立っている。
「助歌から聞いたと思います。木下はちょっと前に去りました。新しい召使いは立てるつもりはありません。以前と同様に助歌に任せます」
母上はすでに有希乃がいないことにして話を進めている。
残念だ。オレはそんな先のことを聞きにここに来たんじゃない。
「オレの召使いは有希乃以外ありえない。こんな状況でも、諦めきれない。だから有希乃を戻してほしい」
「無理です。有希乃はちゃんと承諾しました。それなりの条件は残しましたけど」
条件? 確かそんなことを有希乃は言っていた。けど、あの時はあまりに夢中で解雇を取り消そうとして必死だったから気が回らなかった。
何にもオレはその条件って奴を聞いてない。解雇する代価としてもらった条件とはなんだ?
「母上、オレはその条件を知りません。有希乃出したその条件、教えてください」
「いいでしょう。けど灼蜘が思うような条件ではありません。むしろ知らない方がいいかもしれない。それでも聞きますか」
真面目な表情で言っているのだから間違いないだろう。けどそれは母上から見た感想に過ぎない。
オレが見ればきっとまた違った観点から見られる。
だからオレは首を縦に振って答える。
「教えてください」
「分かりました。木下が出した条件は一つです。それが“自分の部屋を今の状態で残すこと”です」
言い方が複雑だが、ようは部屋はそのままにしてほしいってことだろ? なんだその条件。意味が分からない。
その表情はなんとも言い難いが後悔はしていないように見える。
「母上」
オレは部屋に入って第一歩で呼んだ。その横をスッと助歌が過ぎて、母上の隣に立っている。
「助歌から聞いたと思います。木下はちょっと前に去りました。新しい召使いは立てるつもりはありません。以前と同様に助歌に任せます」
母上はすでに有希乃がいないことにして話を進めている。
残念だ。オレはそんな先のことを聞きにここに来たんじゃない。
「オレの召使いは有希乃以外ありえない。こんな状況でも、諦めきれない。だから有希乃を戻してほしい」
「無理です。有希乃はちゃんと承諾しました。それなりの条件は残しましたけど」
条件? 確かそんなことを有希乃は言っていた。けど、あの時はあまりに夢中で解雇を取り消そうとして必死だったから気が回らなかった。
何にもオレはその条件って奴を聞いてない。解雇する代価としてもらった条件とはなんだ?
「母上、オレはその条件を知りません。有希乃出したその条件、教えてください」
「いいでしょう。けど灼蜘が思うような条件ではありません。むしろ知らない方がいいかもしれない。それでも聞きますか」
真面目な表情で言っているのだから間違いないだろう。けどそれは母上から見た感想に過ぎない。
オレが見ればきっとまた違った観点から見られる。
だからオレは首を縦に振って答える。
「教えてください」
「分かりました。木下が出した条件は一つです。それが“自分の部屋を今の状態で残すこと”です」
言い方が複雑だが、ようは部屋はそのままにしてほしいってことだろ? なんだその条件。意味が分からない。