幻が視る固定未来
もっとまともな条件は無かったのか? だって自分の解雇を賭けたのに……そんな意味の分からない条件ないだろ。

有希乃が解雇されたということはオレとの繋がりがなくなったということ。それは一度離れれば二度と会うことは出来ない。そのままの意味で繋がりなどないんだから。
だからオレは秘かに有希乃の出した条件が、オレと再会すること、だと想像していた。そうでもしない限り会うことなど出来ないんだから。

部屋をそのままにしておいてどんな意味がある? また再会できるのか? ここを出る準備をまだ終えずに出て行ったなら、後日また来るという意味なのか。

でもそれだと会えるのはそれきり、次がない。なら率直に休みの日に会うくらい条件にすればいいし、この先休日ならいつでも会える。

「灼蜘、この話を言いたくなかったのはもう一つ、言っておかないといけないことがあるから」

思考が衝突し続ける中、母上は唐突に切り出した。
ふと、母上を見てみると、それは確実にいいことでないと確信する。そんな悲しい顔は止めて欲しい。気になることも聞けなくなるから。

――でも聞く以外に道はないのは確か。少しでも情報が欲しいから。それが例え絶望だとしても。

「聞かせてください」
「はい。木下の条件を聞いて灼蜘は思ったはずです。部屋の片付けでまた木下が戻ってくると、一度だけでも会えると。しかし、それは違います。もう有希乃はここの召使いではない。今日が最後だった。だから持てる荷物は全て持ち帰りました」

なら、今、残された有希乃の部屋に一体どんな意味が? もう、会えることなんてない。それも今の話で母上は言い切った。


ここの召使いでないから会えない。



あぁ無理だ。絶対的、絶望的に無理だ。有希乃に会うことはもう……







……二度とない。
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