幻が視る固定未来
「灼蜘君? なんか最近元気ないね」

学校の昼休み。芳原はいつものように話しかけてくる。

「そうか」

オレは素っ気なく返事をする。
だってこんな所で話していることに意味などあるのだろうか。話さなくても話してもどうせ同じなら、オレは話さないことを選ぶ。
――めんどくさいから。

いちいち言葉を返すことが。
感情を表に出すことが。
決まったこと以外することが。

「何かあったの? 相談くらいなら乗れるよ」
「別に何も。それ以外に用はあるのか」
「え……ううん、何もない」
「……」

もう言葉で返さない。
黙って敵視するだけで、用がないなら戻れ、と芳原は理解するから。突き離せば誰だって離れていく。話しかけてこなくなる奴だって増えた。以前なら勉強を教えてもらいに来ていたが『わざわざオレに聞かないで先生に聞いたらどうだ?』と言い返したら困った表情をしたが渋々自分の席に戻って行った。

他にも泣き出しそうな奴、怒る奴もいたようだがどうでもいいこと。後は黙っていれば勝手にことは終わる。
だから言うだけ言って後は黙るだけでいい。

――この芳原を除いては。
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