幻が視る固定未来
最終的には芳原も自分の席に戻る。だけど、ただ黙っているだけでは戻らない。こうして睨まないと戻らない。

昨日はそれで戻って行った。けど今日は戻らない。困っているのは明らか。だけどそこにある感情は怒っているように見える。
それもそうだろう。一方的に突き放してるんだからな。けど、ここでオレが芳原に相談したことにより“有希乃は帰ってくるのか?”。
答えなど分かっている。だからオレは無駄なんことなどしない。

「灼蜘君、なんか怖いね。突き放すような態度が特に。でもそれは逆に悩みを抱えてるってことだよ?」

まさか、ここで反論が出てくるとは思わなかった。
こいつには何を言って無駄だし、何も言わなくても無駄。じゃあどうすればいい?

あぁそうか、こいつが目の前から消えないならオレから消えればいい。
そうしてオレは何も言わずに席を立ち教室を後にする。

「待って灼蜘君!」

こいつしつこすぎ。
教室を出ても声を張り上げて追ってくる。
それでもオレは無視して廊下を歩き続ける。すれ違う生徒はオレを見てくるが、全てにらみ返すと視線を逸らす。

階段に向かいそのまま上った。そうして封鎖された屋上の扉の前まで来る。
人気のない階段のおかげで芳原が付いてきているかは一目瞭然。余計に聞こえる足音が響いているのだから。
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