幻が視る固定未来
「本当は悲しませたくなかった。ただ、私にどうしょうもなくどこにもぶつけられない怒りをぶつけて欲しかった。そうしないといつか破裂して自滅しちゃうから」

「なんで……だよ。そうまでして」

掠れている声は泣きだしているようにも聞こえるが、まだ泣いてはいない。むしろ泣い
てはいけない。こんな所で弱さを見せてはいけないから。

「ん~と、こうゆう時は、ありがとうって言って。私はそれで満足だから」

分からない。たった一言のために芳原はあんた罵倒に耐えたと言うのか。
でも、おかしい。今のオレにはさっきまであった苛立ちや怒りがない。発散というのはこうゆうことかもしれないと感じるほど。
だから今はたった一言いうだけでいいだろう。

「……ありがとう」

本当にその一言だけで……。
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