幻が視る固定未来
「……」

そうしてゆっくりとオレは、自分が玄武という人外であること以外の全てを話した。

最初は有希乃と友達になり、そしてゆっくりと恋人の代わりになったこと。そのきっかけが芳原の言葉であったこと。
そして大丈夫だと言ったにも関わらずあっさりオレの目の前から去ったこと。
オレとの思い出をそのまま置いて行った部屋のことも、そう全てのことを教えた。

吐き出したい言葉、不満を全て出していたような、そんな気もする。
芳原はただオレの言葉を横槍も入れずただ大人しく聞いていた。悩むとは違う、何か考えるように。

そうしてオレの話が終わっても芳原は考え込んでいた。
邪魔しても悪いと思いオレはとりあえず何も言わずに黙っていることにした。
ちなみにさすがに長話になると思い、オレは芳原の隣に座り、フェンスのよしかけている。

「……灼蜘くんは、本当に恋人っていうのを知りたくて木下さんと恋人になったの?」

やっと疑問を口にした芳原だが、オレの返答次第で態度が変わりそうだな。オレを試す質問みたいだ。

「恋人じゃない。恋人代わり。さっきも説明しただろ? オレには婚約者がいるって」

ここは少し事実と変えている。実際の今のオレには婚約者などいない。けど、説明がめんどうなのでいるとゆうことにした。
屋上に冷たい風が流れる。
そしてそのまま流れる風のように芳原は言う。

「灼蜘くんは、木下さんが好き。だから恋人になりたかった。だけどその時の灼蜘くんは好きという感情をよく理解してなかった。恋を探している内に、きっと木下さんが好きだっていうことに気がついた。だから婚約者がいようとも恋人になりたかった。でも婚約者がいる。だから木下さんは恋人になって欲しいと言っても断られると思った。だから代わりと言った。灼蜘くんは本気で木下さんと付き合いたかったから」

長々と芳原は話す。
それはオレの言わなかった部分であり、言うつもりのなった部分がある。けど、全てが正解ではない。今回はパーフェクトとはいかないようだ。
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