幻が視る固定未来
――けどこれ現実。

友達感覚とは木下には木下の、オレにはオレの感覚だから表現が難しいと言っているのだろう。それははっきりとオレのことを友達感覚に呼び捨てにするってことだな……って、
「オレのことを呼び捨てにするのか!?」

やっと理解と意味が現実に追いつき、オレはベッドが軋むくらい跳ね上がりながら聞いていた。

「灼蜘がそう呼べって言った」

いや確かにそうだった、そうだったけどこうも簡単に言ってしまえるものなのか? 今まで誰一人として言えなかったのに……てか、すでに当たり前のように呼んでる!?

――マテ、まて、待て。冷静に考えろ。今こそ普通に呼んでるが他の人の前ではそう呼
ばないかもしれない。木下はきっとこの場の勢いでそんなことを言ってるんだ。

「――いつでもこう呼ぶ」

勝手に結論出して座りなおそうとしや矢先、木下はオレの心を見透かした回答を繰り出してくる。そのせいで座ろうと腰を折ったのに止まってしまった。
どうやらまだオレは座れないようだ。

「オレは何も言ってない」
「なんとなく」

むきになって言い返したのだが相手にもされず、木下は平然とした面でいやがる。この無表情がこんなにも勝ち誇って見えてしまうのはオレが図星であることを認めているからだろうな。
だけどもっとよく考えてみろ。木下が周りを気にして態々呼び方を変えるだろうか。
オレはそんな自問自答に対して何故か『有り得ない』と決めつけてしまう。まだ数日しか会ってないし、会話らしい会話も今日が初めてであるにも関わらずにだ。
いやもっと現実的に考えるならば後から本当に呼ぶかで分かる。こんなことに驚いてるだけ無駄だろう。

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