幻が視る固定未来
「話を戻すが、どうして有希乃はいなくなったんだ? どうして出て行く必要がある。オレにには必要な存在だったのに」
「ん~そうだね。確かに召使いの域を超えてるけど、それはマイナスという意味だけではなく、プラスの意味でも言えることだから……」

どうやら芳原が考えていたのはさっきの疑問だけのようだ。
今になって真剣にどうして有希乃がいなくなったのか考え始めたように見える。まぁ真剣に考えてくれるだけいいんだけどな。
芳原はぶつぶつと自分の頭に右手をそえて、考えをまとめるように独り言を始めている。

――けど、急に閃いたように独り言が止まり、そしてオレの方を見てきた。
お、どうやら何か思いついたようだな。

「……」
「おい、何か思いついたんだろ? 話してくれ」

思いついたようにオレを見たはずだが、急に一時停止ボタンでも押されたように止まっている。
何故、芳原は急に思考停止した? まるで自分の言おうとしたことを後から答えを得たように。けど、それは間違ってないのだろう。だけど、ぎりぎりまで出なかった疑問をオレは知りたい。

「とりあえず、今言おうとしたことを教えてくれ。頼む、この際なんでもいいんだ」

オレはすがるように言うしかない。

「んと、灼蜘くんは木下さんが好きだから付き合ってって言ったんだよね? だったらなんで木下さんは灼蜘くんの告白にOKしたのかな? って思ったけど……」

確かにそう思うだろうな。オレも確かに驚いた。けど、有希乃もオレと同じなんだ。恋を知らないから知りたかった。ただ、それだけの理由。単純にシンプルにそれだけのことでオレの告白にOKした。
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