幻が視る固定未来
……ん? 待てよ。そのことを芳原はオレが言う前に納得した? どうして、有希乃のことも知らないのにどうしてオレと同じ理由だと考え付く。
それはつまり、オレの答え、即ち真実とは違う解答を芳原は導き出したということ。
オレはその別解答が気になる。だからあえて答えは言わずに聞こう。芳原の答えを。

「それで芳原はなんて答えを出したんだ?」
「う、わざと私に聞くんだね。えと、木下さんも実は灼蜘くんのこと好きでしょ? だから告白にOKした」
「え?」

有希乃がオレを好き?
え? でもそうだろ? だって、え、なんだ。きっと、いや、もっと違う答え。違う違う。

ふぅと心の中で深呼吸。落ち着こうオレ。
有希乃がオレのことが好きか。多分、好きであるような気もする。少なくてもヤキモチは妬いてくれたから。
でも、オレはそのことを本人の口から聞いてないからなんとも言えない。

「えぇ! 違うの?」

オレの驚きで、自分の答えが間違っていると判断した芳原は、いつもの冷静とはかけ離れた驚きの表情と声を上げている。
分かる。その気持ちは分かる。最初に驚いたのはオレだ。だからここは余計なことは言わずに真実を教えよう。

「有希乃もオレと同じ。恋を知らなかった。だから知りたくなったんじゃないか? それに相手がオレならいいって言ってくれたし、多分、好きだとは思う。本人から聞いてないから分からない」
「そ、そっか。でも、その分だと灼蜘くんからも好きとは言ってないんだね。駄目だよ、ちゃんと言葉にして言ってあげないと」
「だから有希乃は出て行ったのか」
「本当は私から言いたくはなかったけど、言ってあげる。でもその前にこの質問に答えて。灼蜘くんは木下さんを信頼してる?」

真っ直ぐな瞳がはっきりとオレを見つめている。
オレもその瞳を見て、はっきりと答えてやる。
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