幻が視る固定未来
オレは有希乃を信用すると決めた。

『大丈夫』

その一言を放ったのは間違いない。だからオレはそのたった一言を信頼する。
けど、あんまり遅いと待ちくたびれて、またぐれてやる。だから有希乃、早く戻ってこい。

――だけど、戻ってきたところで有希乃の居場所がないのは事実。つまり、戻ってきたとするなら一瞬。また前のように一緒に暮らすことは不可能。
一度会うということはひょっとすれば最後の再会になるのかもしれない。それは正直言って恐怖以外何物でもない。

会いたいのに会いたくない。それが現実。

だけどオレは“会いたいし、離したくない”と、思えばオレの気持ちはここまで膨らんでいた。
どうしてくれるんだよ有希乃。オレの人生をここまで狂わせやがって。オレには一応、婚約者だろう人だってきっといるんだぜ?

本当に、本当にありがとうな。
こんな感情をくれて。
こんな幸せをくれて。

オレは心から有希乃に出会えたことを喜ぶ。これが神の導きっていうなら生神だろうが死神だろうが喜んで崇拝してやる。
それに、オレはただ待つだけじゃないんだ。有希乃のために、またここに戻ってこれるようにしてみせる。

それがオレの目標だ。絶対に諦めない。何が何でも母上に有希乃のこと認めさせる。
そうしてオレはもう一つの決心をした。有希乃の言葉を信用する以外に、もう一つ。有希乃の召使いとしての復帰。

可能と出来るのはただ一人、母上だけ。
覆せないことを覆す。
それをやってのけるためには何が必要なのだろうか。それをオレは知らない。ただ言えることは“諦めないこと”だと思う。

よし、やってやる!
そうしてオレは母上に有希乃ことを話すことを決めた。
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