幻が視る固定未来
「聞きました。けど、今オレはここにいます。その強行手段とやらを取りますか?」
「もちろんそのつもりです。その前に聞いておきましょう」
「なんですか」

険しい表情から余裕のある表情。
それはつまり見下しているも同然の状態。それほどまでオレの挑戦を打ち下す手段を持ち合わせているのだろうか?

「灼蜘はずっと木下有希乃を必要な存在だと主張していましたね?」
「はい、オレにとって有希乃は必要な存在です」
「そうです。灼蜘は手助けしてくれる人を求めている。それが別に木下有希乃ではなくてもいい」

まさか……母上はひょっとして。

見なくてもオレの顔が動揺しているのは分かる。表情をセーブしている暇はない。
もしそうなら、何か打開策を考案しなければ……そうしないと、まずい。
焦りは何も生み出さない。そんなことを分かっていても焦ることしか出来ない。母上が次を言おうとする刹那まで、オレは考える。
――けど、何も思いつかない。だから母上は先の言葉を言う。


「貴方の婚約者を決定しました」


ヤバい。違う。これは間違った方向に進んでいる。
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