幻が視る固定未来
有希乃の部屋で寝たのはまずかったけど、それは間違ったことでも咎まれるようなことでもない。
何故なら今日は日曜日。一日中自由時間の日だから。

オレが目覚めたのは朝、いつもよりも少し遅い時間。目覚ましもなく、起こされることもなく自然と起きた。
誰もオレがここにいることを知らなかった訳ではない。気がつけばオレは毛布に包まれていたのだから。
きっと助歌あたりが掛けてくれたのだろう。


そうして休みの今日だが一体何をする?
オレに出来ることは考えること。有希乃の部屋で寝てしまったせいで昨日の自分を思い出してしまった。

固定未来。
それは変わることのない絶対の運命。

これがオレの運命? こんな残酷なものが?
そんな人生ならば“ここ”から飛び降りたらどれほど楽になるだろうか。
見下ろすとそこには人が蟻以下に見えるし、車でさえスローモーションのように動いている。隣のビルの天井が見えるほどなのだから、この場所がどれほど高い場所だか分かるだろう。

確かここは……どこのビルの屋上だっただろうか。とりあえず高そうだから登ってみただけ。
別に飛ぶ降りるつもりなど毛頭ないぜ? 勘違いするな。さっきのは例えのこと。それほど今の現実に苦労してるってこと。
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