幻が視る固定未来
不確定未来
いつものように母上は待っていた。けど最初から険しい顔などない、そう思ってたがなんとも険しい顔をしている。
それに驚いているような気もする。

「ここに来ない選択もあったはずです。よく来ましたね」
「それは母上と同じこと。逃げることに意味はないって思ったから」
「そうですね。逃げることが一番の間違いでした。けど、私はそれをすると思ってもいました」

それが驚きの正体か。まさか逃げると思われていたとは……そこまでオレは臆病じゃない、はずだ。

「逃げない。それが今の現実。オレは前に進むことを選んだ」
「それはつまり、婚約者を認めるということですね?」
「……」

つまりそうゆうことなんだ。だからオレはここにいる。首を縦に振ればいいだけのこと。悩む必要なんてない。
――むしろ、オレが決める必要もないこと。だってこれは固定未来。決められたことなんだから。

首が縦に動きそうになるけど、触れなかった。どうしてもオレは振ることが出来なかった。

「断る理由はないと思います。ここに来たのはそうゆう意味ですよね?」

母上の言葉は半分までしか聞き取れなかった。
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