幻が視る固定未来
そんなこと言われなくても分かっているから。でも、なんで、なんでそんなことに耐えないといけないんだ。どうしてオレが、オレがこんな思いをしないといけないんだ。
今まで思いもしなかった不満。それが今になって現れる。

「木下有希乃のことは忘れないさい。それが灼蜘にとって一番いいことなんです。苦しむのはあなたです」

ありえない。
それは命令か!? オレに有希乃を忘れろだと?
いくら母上の言葉でも、それは許せない。なら、どうせ変えられない未来だというなら、無理にでも抗ってやる。それでも未来が固定されているなら変わらないんだから。

「オレは有希乃を―――」
「――灼蜘。ここで木下のことを忘れないさい。それ以外の言葉は聞きません」

オレの言葉を塗りつぶした? なんで、なんでそうまでして……。



「嫌だ! オレは有希乃を忘れない。絶対に!」



叫んだ。
吠えた。
雄たけびを上げた。

どれでもいい。とりあえず心の閉まっていた言葉を吐き出すことが出来た。
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