幻が視る固定未来
「なんでそうまでして――」
「――好きだからだ。どうしょうもなく有希乃のことが好きだから」

どうやら一度吐き出した言葉は最後まで出てくれるようだ。だったら最後まで、吐き出せ!

「あなたには婚約者がいる。木下の存在は邪魔なだけです」
「なんで、勝手に決められる!? オレは自分の選んだ相手と付き合いたいんだ」
「勝手に決められるのではない。それが決まりなんです。それが真の玄武になるための道なんです」

母上も珍しく感情的になっているがオレの比ではない。
これが最後の言葉に、最後の不満の吐き出しなるのだろうか。多分そうだろう。その言葉をオレは言う。



「自分の女も選べずに、何が真の玄武だ。そんな玄武にならオレはいっそならない方がましだ!」

「……っ!」


母上は言葉を無くした。むしろこれで冷静に言葉を返せるほうが疑問を抱く。
オレでさえ、こんなことまで言えるとは思わなかったのだから。

「オレは絶対に、有希乃は忘れない」

もう一度、はっきりと言っていた。言いたかったから。
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