幻が視る固定未来
その男が母に被害を加えようとした時、父が初めて見せた感情は怒り。
それも火山の噴火よりも激しかったそうだ。その男も隊長格に遅れを取らないほど強く、そして父よりも強いと自信があったそうだが、全く歯が立たないのは言うまでもない。

怒りでそのまま殺しかねない勢いを止めたのが母上。
そして母上が止めなかったら、その男は死んでいただろうほど激しい。

しかしそれすらも男の戦略の一部だった。殺されかけた理由を立場を奪われた嫉妬心から行った暴力だと広めた。
ますます下落する父の株。
そして父に狙われていると男を庇い助ける部下。そこは何も知らない桃巴ですら疑いの目を向けてしまうくらいだそうだ。
このまま消えても面白いかもしれないと漏らした父の一言。そして母上にこれ以上自分の部下である必要はないと一方的に告げた父だが、もちろん母上は認めなかった。

『傍にいたいから傍にいる』

母上は言い切った。だから離れことはなかった。
たった一人の味方に父はどれほど助けられただろうか。母上がいたからこそ、父は玄武でいられた。それほどまで大きな存在になっていた。
そこで自分を信用してくれるものに対して何もしないのは悪いと、父は玄武の威厳を、そのカリスマをまた復活させた。
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表紙・目次

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