幻が視る固定未来
終には孤独となった男だが、手を差し伸べたのは父。
父は男に怒りの感情はもうない。だからこそ今までのこと全てを許した。何故ならその男も自分の部下であるから。

本来、父が本気で指揮を下せばどの部隊にも負けない真面目で規則的な部隊になれただろう。けど父はそれを

『楽しくないだろう』

の一言で済ました。
父のモットーに“自由”にと“自分らしく”というものを持っていた。だから無理強いはしないし、したくないならしなくていい。付きたくないなら好きな奴につけばいいと思っていた。
父は玄武であることにちゃんと誇りを持っていた。だからこそ、やることはやっていたし玄武としての道を迷わず歩いていた。

父の信用を完全に取り戻した部隊は真面目ではなく規則的でもないのにちゃんとしてる部隊と、よく分からない部隊だと言われたらしい。けど生神は高く評価したそうだ。

父は玄武だ。本当に真の玄武だと思う。だから後は母上と結ばれるだけだと思っていた。
だけど違う。父が玄武として結ばれる相手はとっくの昔に決まっていた。それはもちろん父の前玄武が決めた相手である。
最初は何も文句も言わなかったが、この事件の後、父は反対した。言うまでもない、この時には自分の気持ち、あそこまでずっと自分を信頼してついて来てくれたのは母上だけだったから、自ずと愛情が芽生えていた。
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