幻が視る固定未来
父の前玄武はどんなことがあろうとも、玄武として婚約者と結婚させるつもりだったが、それで父は

『自分の女一人満足に決められねぇ奴に玄武を名乗る資格はねぇ。だからオレはあいつを選ぶぜ。もう決めたことだ』

と言い切った。

それは本当に決めたことらしく、父はその前玄武の返答も待たずに勝手に退席して、母上を前玄武の前に連れ出した。そこでしたのは父から母上へのプロポーズ。
驚くのはその場にいた父以外の全員。母上ですら驚いた。父に婚約者がいたのは初めから知っていたのだから。でもその内には叶わない恋と思っていた。

母上の返答は決まっていたけど肯定は出来ない。もし肯定すれば自分が父から玄武を奪うことになると思ったから。
前玄武は母上に覚悟があるか聞いた。その時、母上はもちろんないと答える他なかった。
けどそこは父が認めない。

『だったら足りない分の覚悟はオレが補う。だからお前の本当の言葉を聞かせてくれ』

と言われ、母は覚悟を決めた。
この人なら大丈夫だと確信して。
けど、それは正しい判断とは言えない。父の道を変えてしまったのだから。大変なのは母上よりも父の方。何も知らない母上に父は全てのフォローをする日々。それに対して全く苦の表情や疲れすら見せない優しさ。母上は嬉しい反面、後悔もした。
最高の玄武を最低の玄武にした。だから次は絶対に道を外させない。それを心に誓っていた。

その結果が今のようにオレという存在に対する育て方だったらしい。
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