幻が視る固定未来
話を終えた母上の表情は、父のことを話したからか機嫌がいいように見える。
それに母上の玄武に対する感情や思いも理解したつもりだ。それは同時に父の思いも知ったということ。だからオレはますます有希乃を譲れない。

きっと父は後悔してない、母上を選んだことを。
だからオレも後悔しない、有希乃を選んだことを。

けど、この話をしてくれたのだから母上は認めてくれた。そう確信できる。
母上は後悔していると言うがそれは父を気遣ってのこと。だから聞けばいい。もっと簡単でシンプルな質問だ。

「母上は幸せでしたか」
「はい、あの人でないと私は幸せではなかったでしょう。あの人がいたからこそ、あなたもいる訳だから」

語る母上には後悔の色を全く見せていない。幸せだったという色しか見えない。
そうだ、やっぱり自分の相手は自分で見つけるのが一番なんだ。確かにまだ、オレは有希乃と結婚する訳じゃない。でも有希乃なら結婚してもいいと思える。
この場でプロポーズ出来るこどオレは父のように大胆ではないが、その勇気があればしてもいいかもしれない。
そういえばこうやって真面目に父の話を聞いたのは初めてのこと。そして父の生き方というものを知った。

“自由”
“自分らしく”

それが父のモットー。なんとなく今なら分かる。きっと有希乃に出会う前のオレなら理解出来なかっただろうな。
きっと有希乃を選んだ今、そうやって二つのモットーの元に生きるのがきっと幸せで楽しい道なんだろう。
だからオレももっと自分らしく、自由に生きようと思う。それが性に合わないなら止めればいい、ただそれだけの話だ。
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