幻が視る固定未来
話をずっと黙っていたのはオレだけではない。
有希乃も助歌もそうだ。助歌はあまりの感動のあまり泣きそうな表情で、いやハンカチ片手に泣く寸前なのだろう。
有希乃はオレに背を向けていたが急に振り返り、ただ見つめてくる。


「どうした有希乃」
「私を貰って」
「……!」


声にならない驚きとは正に本気で驚いた時になるらしい。今のオレがそうだ。
オレの勘違いがないようにはっきりと言葉を思い出し理解しろ……けどそれははっきりと告白にしか聞こえない。
有希乃には覚悟がある。まだ年の幼いオレと有希乃だが、それでも言えるほどの覚悟がある。オレにその覚悟はあるか……。

「くれるなら、もらうさ」

どうやらあったようだ。あっさりと有希乃を貰った。
そのオレの言葉に何とも言い難い、やはりという顔をしていたのは母上で、ハンカチで溢れる涙を拭うのは助歌。

目の前の有希乃はただ一瞬だけ、万年の笑みを返してくれた。
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