幻が視る固定未来
風呂場から出て着替えると、廊下では何食わぬ顔して木下が一冊の本を読んで待っていた。
そういえばこいつは一体何を読んでるんだ?
「長風呂」
「悪かったな。けどこれくらいは普通に入る」
確かに時計の針が一周をするくらい入っていたが、それも全てどっかの誰かさんが休息中まで出てくるからだ。
「平均十五分」
「それは木下が早すぎだ。それに風呂に入るじゃなくてシャワーを浴びるの間違いじゃないのか?」
「人それぞれ」
「……そうかい」
「そう」
だったらオレに長風呂とも言えないんじゃないだろうか。
そんな会話の途中に木下は読んでいた一冊の本をズボンのポケットに無造作にしまっている。
「そういえば木下は何を読んでいるだ? カバーはこの前のとは違うな」
「……これ」
オレがそんな質問したせいか木下はまた本を取り出してオレに手渡す。
とりあえず一ページ目を開き、その本がどんなジャンルであるかを探る……のだがオレは何枚もページを捲っていた。
「――コレナニ?」
「本」
いやいや本であるのは間違いないよ?
けどこれは本は本でも辞典と言われるものではないか?
これを小説感覚で読むものではないとオレの常識は言っているのだが、関心のない世界の中でそんなブームでもあるのか。
最新の言葉辞典。
それも持ち運び手軽にサイズを小さくして文字も細かすぎる。こんなものは本当に調べ物以外では読みたくはない。ましてや長時間など読める訳がない。
だけどだ、この言葉辞典(最新版)の半分くらいのページにはちゃんと栞がはさんである。
「面白いか、こんなの読んで。というか疲れない?」
「参考になる」
「そ、そうか。ならいいけど」
オレはもう何も聞く気にはなれず、ただ言葉辞典を返すだけだった。
本当に訳の分からない奴だ。取扱説明書でもないだろうか。本当に誰か作ってくれ。
そういえばこいつは一体何を読んでるんだ?
「長風呂」
「悪かったな。けどこれくらいは普通に入る」
確かに時計の針が一周をするくらい入っていたが、それも全てどっかの誰かさんが休息中まで出てくるからだ。
「平均十五分」
「それは木下が早すぎだ。それに風呂に入るじゃなくてシャワーを浴びるの間違いじゃないのか?」
「人それぞれ」
「……そうかい」
「そう」
だったらオレに長風呂とも言えないんじゃないだろうか。
そんな会話の途中に木下は読んでいた一冊の本をズボンのポケットに無造作にしまっている。
「そういえば木下は何を読んでいるだ? カバーはこの前のとは違うな」
「……これ」
オレがそんな質問したせいか木下はまた本を取り出してオレに手渡す。
とりあえず一ページ目を開き、その本がどんなジャンルであるかを探る……のだがオレは何枚もページを捲っていた。
「――コレナニ?」
「本」
いやいや本であるのは間違いないよ?
けどこれは本は本でも辞典と言われるものではないか?
これを小説感覚で読むものではないとオレの常識は言っているのだが、関心のない世界の中でそんなブームでもあるのか。
最新の言葉辞典。
それも持ち運び手軽にサイズを小さくして文字も細かすぎる。こんなものは本当に調べ物以外では読みたくはない。ましてや長時間など読める訳がない。
だけどだ、この言葉辞典(最新版)の半分くらいのページにはちゃんと栞がはさんである。
「面白いか、こんなの読んで。というか疲れない?」
「参考になる」
「そ、そうか。ならいいけど」
オレはもう何も聞く気にはなれず、ただ言葉辞典を返すだけだった。
本当に訳の分からない奴だ。取扱説明書でもないだろうか。本当に誰か作ってくれ。