幻が視る固定未来
まぁ、手加減して評価を貰えないのは困るだろう。ほとんどこのスポーツ試験にかかっているのだから。
……なら、オレはどうする？　重い自答だな。それでも相手に怪我はさせたくないな。
そこまでして評価など得られたくないしな。とりあえずそれなりにやっておこう。


「貴様！　わざと寝技をしたな！」


凛と透きとおる声が道場に響く。Ａフィールドで問題発生っと。

気がついているのは……どうやらＡフィールドの受験者とオレ、後は近くにいた先生だけだろう。みんな真剣なのかそれともわざとなのか視線は自分のフィールドにしか向いていない。

とりあえず面白そうだ。オレは他の受験者とは違い、Ａフィールドの問題を眺めている。

声を張り上げたのは女子。黒……いや紺色――――――紺碧色の滝を流す長髪を動きやすいように輪ゴム一本で縛っている状態。
黒いジャージとよく溶け込んだ色の組み合わせだな。背もまぁ低くはない、というか周りの女子よりも首一つは高い。

「いいの木葉、どうあれ私は負けたんだから」

文句を言ったのは敗者ではなく、その友達の女子のようだ。その負けた女子は自分の負けを認めているのに、何故にあの女子は認めないんだかな。
　
わざと寝技をしたと叫んでいたな。
あの対戦者である男のにやけ面から見て、男女混合の試合で男がやってはいけないことをしたんだろう。
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