幻が視る固定未来
状況把握の刹那、オレは一気に走り出し、座ったまま三人の止めようともせずに無視し続ける受験者の頭をとび越え男を止めようとする。

――きっと男は殴るつもりだっただろう。
オレはその手を掴み、そのまま一気に一本背負いで投げ飛ばしてやった。

しかしその刹那、はっきりと長髪の女子が殴りかかろうとしていた男の手を掴もうと体制を変えているのを見た。
どうやらいらんことをしたかもしれない。けど、もう遅い投げちまったからな。

「ぐっ」

見事に綺麗に決まった一本だが評価的には最悪だろうな。いきなり背中から不意打ちにように投げたんだから。

とりあえずこの場を収拾させるには誰でもいい、この男を止められる奴が止めればいい。ただそれだけの話。

オレはそのまま投げ飛ばした男の腕を掴み引きずり出す。
不意に食らった一撃のためまともに受け身も取れなかったのだろう。抵抗することが男には出来ない。

「反則により退場します。お騒がせしました」

Aフィールドの先生に頭を下げ、そのまま引きずりながら道場を出ようとしたが長髪の女子に一言だけ言っておこう。

「お前のしたことは間違ってない。けど時と場合と口調と態度をもう少し考えた方がいい。安い挑発は無駄な戦いを生むだけだ」
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