幻が視る固定未来
準備は簡単。
ジャージの上から簡単に切る柔道着。
場所はすぐに確保され、オレの目の前では同じく柔道着を着た長髪の女、雪櫻木葉が凛と立ちはだかっている。

こうやって一つの試合空間に入って分かる、雪櫻の闘気と殺気が。
なかなかのものだ。まともに戦ったらいい勝負するだろう。

「それでは一本勝負、始め!」

先生の合図に反応するが雪櫻も同時だった。やるな反射神経がコンマオレよりも早い。

速効で間合いを詰めようと突進してくる雪櫻だが、あいにくオレは後退してその動きを見ている。
オレを挑発するから悪いんだぜ? お前はオレに一歩も触れることなく試合が終了する。
つまりオレは永遠と逃げに徹する。普通なら指導を受けるがこの試合にそんなものは関係ない。オレは勝手にそう判断する。

雪櫻は三歩ほどでもう掴みかかるモーションに入っている。こいつなかなか速いな。油断出来ない。
避けようと体を逸らした瞬間、雪櫻の動きが止まり、避けたはずのオレと視線が交わる。

ヤバいこいつ、オレが逃げに徹することを分かっていやがった。わざと突進してフェイントをかけやがったな。

オレはフェイントで一歩先に行動してしまった。まだ雪櫻は動ける。むしろここで掴みかかってくる。まさか一発目で掴まれたらオレの立場がないな。仕方がないがちょっと本気出すぜ。
< 263 / 383 >

この作品をシェア

pagetop