幻が視る固定未来
最後の試合だからみんなから注目されるのは分かっていた。けど一歩踏み出すことにそんなことは忘れる。
これが緊張だとでもいうのか? 違うな、オレは体を動かしたい。戦いたいとオレの血が叫んでいる。

面をつけていても雪櫻の目は見える。はっきりとオレだけを睨みつけていやがる。だからあえてオレは冷静に受け流してやった。

先生が説明を始める。オレは一度も試合を見てないからどんなルールの下で行われているのか分からなかった。
けど基本的な剣道のルールを採用し、制限時間もない。とりあえず一本取った方が勝ちで、試合も終了。

真剣一本勝負。

説明が終了しいざ開始の合図を先生がしようとした瞬間、雪櫻が竹刀を先をオレに向けて言ってきた。

「全力で行かせてもらう。さっきのようなふざけた試合では怪我では済まさない。そのことを覚えておけ幻視灼蜘」

言われたら言い返してやる。それが礼儀だ。

「一本勝負だ、今度はさっさと負けを認めるなよ? そんな勝利じゃオレは満足しないぜ」

これ以上の会話は不要。後はこの竹刀に込めるだけ。
オレも雪櫻も構えると、先生が開始の合図をする。

「それでは、始め!」
< 271 / 383 >

この作品をシェア

pagetop