幻が視る固定未来
有希乃が特訓の後によくする予測訓練と判断力テスト、なんとなく負けを言ったら出してくるだろうとは思っていた。
だからすんなり答えられたつもりだったけど、まぁ有希乃はオレの予測を軽く超えていく。

「それならもし、相手が幻視の扉発動までに懐に飛び込めるスピードを隠し持っていたら?」
「……それは、オレの負けか」

詰将棋のようなもの。有希乃はありえないことだろうが駒として使ってくる。
だけどこの場合、スピードに特化した能力もしくは瞬間移動的な能力があったら終わりだ。つまりありえないとは言い切れない。

しかし瞬間移動でないならまだ望みはなる。幻視の扉を発動させている時の集中力は普段よりも遥かに高いからな。
いや、懐限定なら瞬間移動でも防げる。分かっていたらの話だが、つまり今回は負けを認めるしかないということ。だから次からは同じ過ちはしない。

また勉強になっちまったってことか。
有希乃は本当に戦いというものを知っている。

まるで実戦を掻い潜ってきたかのようにリアルに強さというものを知っている。
有希乃がいたからこそオレは強くなれた。
きっとあのまま助歌がオレの訓練の手伝いをしていたら、きっとこうにはなれない。玄武らしい玄武になっただろうが、父のような玄武にはなれなかっただろう。
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