幻が視る固定未来
森林を奥に行くにつれて森に迷い込んだよな風景に変わり、オレは一瞬で魅かれた。

「単純」
「悪かったな」

無言のままオレと有希乃と森林を歩く。
さすがに手はつないでいない。人が見てないとはいえ無理。

そうして歩いている内に有希乃の表情が険しくなっている。

「どうした有希乃?」
「……」
「有希乃!」
「……」

オレは足を止め、有希乃を見る。
険しい表情のまま有希乃も足を止める。そして何か周りを見渡す。

「ちょっと待ってて」
「待て! どこ行くんだよ」

あんな表情のまま行かせられない。
オレは突然歩きだした有希乃の手を取り止めた。

「…………」

オレの問いに有希乃は答えない。

「どうした――――――」
「――――――お手洗い……」
「悪い」

オレはすぐに手を離した。
恥ずかしいことをやっちまった。さっさとオレも気がつけよな。
そうしてオレは有希乃を待つことにした。

……森林に一人って寂しいな。
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