幻が視る固定未来
やはり状況が状況なだけに助歌はあっさりと認めてくれた。
分かっていた結果だけにオレは何も驚くことなくただ助歌に礼だけを言っていた。もちろんのこと、木下はオレ達の会話中も一つのアクションも起こさずにどこを見ているか見当もつかない。

「それじゃ木下、飲み物をちゃんとオレの部屋に持ってきてくれよ」
「了解。ちゃんと“灼蜘”の部屋に持って行く」

ははは、ここぞとばかりにはっきりとオレのことを名前で呼んだな。堂々という所が木下らしい。

それとオレ達の会話は聞いていたみたいだ。
そしてオレは自分の部屋に向かい、階段を上ってから納得のいかない表情の助歌を後ろからつけている木下を見送ってから自分の部屋に向かった。

多分、助歌が認めてしまった以上、今後誰も木下がオレの名前を呼ぶことに対して文句は言わないだろう。けど絶対に助歌はこのことを母上に報告する。
――その時にもし、母上が木下に対して名前で呼ばせるなと言われたら……断ることは出来ないだろう。
流石に自分が言ったことでも母上が止めろというならば逆らうつもりはない。ちょっとした悪ふざけと認めざる得ない。最初は本当にそんな些細な悪ふざけでもあるのだから。
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