幻が視る固定未来
「ここで消える奴に、教えても無駄だろ?」
「くっ!」

可能性の高かった背後から来ず、真横なら武器の持たない右手を狙われた。
神素を纏い、そして痛覚を消す能力を発動していたため、二撃目は辛うじて避けることが出来た。

「なるほど、神素を纏い、痛覚を消す能力か。瞬時に発動させ、そして集中力を切らさなかったということは少しは戦い慣れしているということか」

男の剣についた血を振り払っている。
間違いなくあの剣は護封剣。資料とまったく同じ型をしている。

私は自分の右腕を見ることが出来ない。見てしまったら集中力が途切れるかもしれない。もうこの右腕はあてに出来ない。全く動かすことのできない状態になっているから。

護封剣の存在すら知っているか危うい灼蜘、なら絶対に黄龍と合わせる訳にはいかない。
私が神素を発動させたことで灼蜘が必ず気が付きここにくる。その前に終わらせなければならない。

「はぁぁ!」

気合いと共に駆けだす。
しかし黄龍の眼にはどのように映し出されているのだろうか。
私が確認できた表情は笑み、まるで勝利を確信して喜ぶ手前の表情に似ている。

そして気がつけば、私の膝は地面についている。


……そして腹から刃が伸びていく……。
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