幻が視る固定未来
「安心しろ、命までは取らない。本来なら我弟に手を出したから切り捨てても良かった」

そう言い残し、青龍は黄龍と森の奥に消えていく。

駄目、今は何よりも生きることに集中しないと。
青龍に伝えられないならせめて灼蜘に伝えないと。
これは守護四神の仲に関わること……そう、だから黄龍は私を殺さなかったのか。

今日は玄武と青龍の対面が目的じゃない。
この二人の仲に亀裂を入れさせるのが目的。そうすれば後に守護四神は機能しなくなる。四人が揃わないと意味がない。

……こんなことをするということは黄龍は死神を復活させる気ということ。それもまた伝えなければいけない。

騙されているとは言え流石は青龍、殺生というのはしないらしい。このままだと死ぬことはない。恐らく誰かしらに発見されるはず。

そう考えているとすぐに人が来た。地面しか見ていない私には誰が来たか判断は出来ない。
顔を上げて見ると……凍った。そこにいたのは黄龍、その瞳は明らかに殺意がある。

「全く青龍にも困ったものだ。やるなら完璧にやらないと意味がない。お前もそう思うだろう」

護封剣を片手に近づいてくる。


……いや、来ないで。


声は出ない。逃げたくてももちろん逃げられない。
< 307 / 383 >

この作品をシェア

pagetop