幻が視る固定未来
有希乃がオレによしかかったまま、仰向けでオレを見ながら何か言っている。
何かをオレに伝えようとしている。
これを聞かないとオレは後悔すると魂が叫んでいるような気がした。

ゆっくりながらも動かす唇に集中する。

“……こうりゅう”という有希乃だが、灼蜘は“……りゅう”までしか理解できない。

確かに有希乃は龍の名を言った。それはつまり、
「それが犯人ってことか」

ゆっくりと頷き、更にまた唇を動かす。

“青龍は敵じゃない”と言うがやはり灼蜘には“青龍が敵……”としか理解できない。ここで第三者である黄龍の名が出てくるはずがない。

再度、確かめるように有希乃は自分をこんな目に合わせた奴の名を言う。

「分かった、大丈夫だ。もう二度と忘れない」

青龍が敵だってことは分かった。絶対にオレが仕返しに行く。だから有希乃、こんな所で死ぬな。
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