幻が視る固定未来
オレの言葉によかったとため息と一緒に頷く有希乃。そして左手だけで自分の首からペンダントを取り出しオレに首にかけた。

このペンダントはお母さんがくれた大切なペンダントであるはず、それをこの場にくれる理由が思いつかない。思いつきなくない。

気がつけば、オレの眼には涙が溜まっている。

違う。違う、違う違う。

「こんな所で有希乃が死ぬか! まだやりたいことだっていっぱいある。秘かに計画してた一緒に高校通うのはどうするんだよ。もっと楽しい思い出を作るって言ったじゃねぇかよ! なぁ有希乃……」



叫ぶオレの言葉を止めたのは有希乃の唇。



初めてのキスなのに、悲しく血の味のする二度と忘れられない感触。
そして有希乃はほほ笑みながら、力なく倒れ込んだ。

「有希乃? なぁ有希乃! 有希乃!!」

いくら呼びかけても返ってくるものは一切ない。
有希乃の全体重がオレによしかかる。それはつまりもう体から力が抜けているということ。
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