幻が視る固定未来
「行くな有希乃!」

オレの言葉に反応してか。それとも端から天に向かうつもりはなかったのか。
魂は天ではなくオレの中に入ってくる。

それがどうゆうことなのか少ない理性が記憶の引き出しを引く。

それは受魂というもの。
それは死を目前としたものが自分の魂を相手に渡す術のようなもの。
それを受け取った人は強力な力を手にすることが出来る。

死神達は魂を狩り、そしてそれを餌としていたが受魂は渡す側が望み、そしてもらう側も全て受け入れないと効果は発揮されない。
つまりこの魂を受け取るにはオレは認めないといけない。有希乃の……。

「嫌だ。絶対に認めない」

頑なに拒むことにより、オレから離れていく感じがする魂。
そこでまたオレは思う。行くなと。
来ても否定するのに離れるのも否定する。こんな矛盾が許される訳がない。

有希乃が受魂を望んでいる。それは最後の最後までオレに尽くしてくれるということ。
それを無駄にはしたくない。でも認めたくもないんだ。

――このまま否定すれば有希乃の魂は天に行く。つまり有希乃とお別れということ。

だからせめて魂だけでも一緒にいたい。
だから認めるしかない。有希乃の……有希乃の死を。
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