幻が視る固定未来
――そうして現れた世界は夢の中? いや体の感触がないから間違いないだろうが、どちらかといえば意識の世界だろうか。
それでもここは心地がいい。それは間違いなくそこに気配を感じ取ってしまったから。

「有希乃、いるんだろ」
「どうして灼蜘がここに」

返ってきた返事に喜びを感じる刹那、ここが天国かと思ってしまうほど嬉しい。その声は間違いなく有希乃の声。

誰が聞き違うかよ。しかしあるのは声だけ。姿は見えない。

「オレだって来たくて来たわけじゃない。ちょっとやりたいことがあってやり過ぎただけだ」
「やりたいこと?」
「そうだ。どうしてもオレは具現化したいものがあるんだ」
「その具現化したいものって?」

何をしたいのか母さんやみんなに聞かれた。けどきっとみんな無理だと、諦めろとか現実を受け入れろとか言うに決まっている。
そんなことを言われるくらいなら初めから言わない。
ひょっとすれば有希乃も同じことを言うかもしれないが有希乃には隠し事をしないと決めた。

だから言う。














「オレが具現化したいのは……有希乃。お前だ」
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