幻が視る固定未来
「どうした木下?」
「……別に」

木下はいつものポーカーフェイスで全く何を考えているのか理解出来ない。だけど自ら木下が動いたことに対して無意味だったことはあるだろうか? それともオレがそんなことを言ったのか。
そんな疑問を持っていた中、今度は木下が当たり前のようにMDコンポのスイッチを押してクラシックを流す。

「雨音がうるさい」

……なるほど確かに気にすれば屋根を叩く音はうるさくて集中できないかもしれない。だけどオレは他のものに集中力を取られるほど愚かではない……多分。その時の気分次第だろうけど。

結局オレの勉強が終わるまでクラシックはなり続けていた。いやそれ以降もかもしれない。オレが部屋を出た時も木下は部屋に残って読書していた。
珍しく木下本人からどこに行くのか聞かれたし、ついて来ようとはしなかったな。それほど読みたい本だったのかもしれない。
まぁどっちにしても屋敷の中だし、付いてきてほしくはない。いや付いて来させない唯一の時間であるトレーニングのためにオレは部屋を出たんだ。ただ木下が先に聞いて来ただけのこと。
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