幻が視る固定未来
「無駄だ。前とは状況がまるで違う」

何故かは分からない。でも助歌は一礼して去って行った。
奈々は帰るんだ、帰るまでいろよ。それだとまるで奈々が帰らないみたいじゃねぇかよ。

「入ってもいい?」
「駄目だって言ってるだろ。そのまま帰れ」

奈々は扉の前で突っ立ったまま動かない。

「前にも言ったけど、何かを話すことで変わることだってあるんだよ。前だってそうだった。話して」
「変わらない。これは無力だと何も解決できない問題だ。それにオレはもう解決してる。ようは成せるかどうかってことだ」
「それは多分、違うよね? 解決方法を分かってるんじゃなくて、解決する手段を知っているだけで、それは先の見えないもの」

また奈々は冷静に分析する。今回は全くのノーヒントだったんだがな、どうやってそこまで分析出来るんだかな。

「それでもオレはやるしかない。だからオレの邪魔をしないでくれ」
「……恐いね。そんな言い方されたら何も言えなくなっちゃう」

明るく接していた奈々も雰囲気が変わり少しだけ顔が俯く。
どうやら奈々は直接言うよりも間接的に言った方が効くらしい。
< 345 / 383 >

この作品をシェア

pagetop